対人恐怖症の治療法として、薬物療法と心理療法があることは
既にお話しました。

心理療法の中で有名なものに森田療法というのがあります。

これは、
精神科医の森田正馬氏によって1919年(大正8年)に創始された心理療法です。

対象となる疾患は、対人恐怖症以外に不安神経症や強迫観念症などもあり、
現在は、日本のみならず、世界的に用いられている療法です。

森田療法は、基本的には入院治療がメインですが、通院治療が行われることもあります。

治療は第1期から第4期まであり、具体的な流れを説明すると以下のようになります。

  1. 第1期は、絶対臥褥(がじょく)期と言い、
    患者を外からの刺激を受けない個室に隔離し、食事、洗面、トイレ以外の活動を
    禁じ、ひたすら寝ているようにさせます。期間は1週間くらい。
  2. 第2期は、軽作業期と言い、臥褥時間を減らし、
    外の世界に触れさせたり、簡単な作業をさせます。こちらも一週間くらいです。
  3. 第3期は、重作業期で、
    睡眠時間以外は、肉体的な重作業や趣味など何らかの活動をさせます。
    期間は1~2ヵ月程度。
  4. 第4期は、退院準備期。
    日常生活に戻れるように、1ヵ月くらいかけて社会生活訓練を行います。
    外出、外泊なども許可され、患者は日記をつけ、専門医が添削をします。

それぞれの期間は、人により異なります。

以上の4つの流れを通して、患者は、
「自分の考え方のパターンを知り、自分の行動パターンを修正し、
そして、自分を受け入れる」ことで、快方へと向かいます。

完治率はかなり高いと言われていますが、
「全治」や「軽快」の定義がさまざまであるのも事実です。

 

森田療法では「あるがまま」という言葉が使われることが多く、
「自分を受け入れる」ということでもある。

このことを森田正馬はその著書で、
詮じつめれば「あるがままでよい、あるがままよりほかに仕方がない、あるがままでなければならない」とかいうことになる』と述べている。